ゲームブック, 近刊情報

送り雛は瑠璃色の

1990年当時、ゲームブックのブームも終焉期にさしかかっていた頃に登場した異色のゲームブック。雑誌『ウォーロック』や、“ファイティングファンタジー・シリーズ”を手掛けていた社会思想社、教養文庫から発売された。

昭和の日本を舞台としているという世界観もさることながら、本作の特殊性は、独特の筆致と、ゲームデザインセンスによって、中盤から突き刺さる、強いメッセージ性にある。それは、ゲームを高品質のジュブナイル小説と融合させただけに留まらなかった。

より複雑に、より高難度に、というベクトルで作品数が増加していく同ジャンルの中で、ルールも展開も極限までシンプルにし、しかしながら、物語の厚みを損なわないための試行錯誤が詰め込まれた意欲作。

そのオリジナリティの高さゆえに、ゲームブックファンからも賛否両論ある。主人公を育成して楽しむことにウェートを置いたスタンダードなRPG路線を期待していると、こっびどく裏切られてしまうだろう。 和歌や日本の民俗学がモチーフになっており、ゲームブックとしてはシンプルでも、その根幹となっているテーマは難解に感じる読者も多かった。

それでも、魅せる物語として、後年、コンピューターゲームに舞台を移し、爆発的な成長をとげるアドベンチャーゲームのひとつの切り口として、“先駆け”だったことは間違いなく、本作に影響を受けて、ライター、クリエイターとなった人は多い。

2004年、創土社より細部を修正されて復刊。2013年にはiOSアプリとして配信された(現在は停止)。電子化は本作が初で、創土社版をベースに微修正を加えたもの。

著者:思緒 雄二
カバーイラスト:マキムラ シュンスケ
本文イラスト:高橋 政輝
価格:400円
2020/4/21 配信

2020-04-21 | Posted in ゲームブック, 近刊情報Comments Closed